クズ(マメ科)

        
クズの花
クズの花
クズの葉
花期は7-9月
クズに覆われた低木
クズに覆われた低木
     

 クズ(葛)は8−9月頃花を咲かせる秋の七草の一つで、万葉集に詠まれています。一方、繁殖力が旺盛で樹木をおおって枯らしてしまう害草でもあります。日本では冬になると地上部が枯死するため、それほど脅威にはなっていませんが、アメリカでは繁殖力の強さが脅威となっています。クズがはじめてアメリカに紹介されたのは1876年のフィラデルフィア万国博覧会で、南東部に持ち込まれたのは、1883年のニューオリンズで行われた博覧会の時だったそうです。

  
広告塔のクズ
街中でもたくましい
広告塔のクズ
広告塔の天辺まで登っていく
広告塔のクズ
ライトの周り

 晩秋の頃、葉は枯れ、茎の下部が年々木質化します。 「NPO法人相模原こもれび」の管理区域では、草刈りをするたびに刈り取られるので、茎が木質化するまでには至っていません。木質化した茎をリースの材料にして相模原市のイベントなどで販売するため、こもれびのメンバーは毎年つるを採取しに行きます。

 クズの根のでんぷんは葛粉として食用にされますが、市販品の大部分には馬鈴薯でんぷんが使用されています。

  
東京都薬用植物園のクズ
東京都薬用植物園のクズ
木質化した基部
基部が木質化している
看板
根は生薬「葛根」
   

 クズの根は生薬「葛根」の材料で、漢方方剤「葛根湯」などに使用されています。葛根湯は、中国の漢の時代の「傷寒論」という古典に記載されています。漢方では風邪といっても「証」と呼ばれる体質や症状に合わせて桂枝湯、小青竜湯、麻黄湯、香蘇散、柴胡桂枝湯、麻黄附子細辛湯など、様々な方剤を使い分けています。

 葛根湯は、自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う、ゾクゾクしてふしぶしが痛むといったインフルエンザのようなかぜのひき始めの症状で、しかも比較的体力のある方に対して使われます。中国では、葛根湯は家族や職場で誰かが風邪をひいたら、その周囲の人が予防的に服薬するという使い方をするそうです。また、最近の研究で、葛根湯は、IL-12とIFN-γの産生を亢進することで、ウイルス産生量を減少させることが報告されています(1、2)。葛根湯はインフルエンザ、コロナ、風邪かもしれない、あやしい時期に服用するのが効果的で、早く使用すれば1-2回、1日くらいで効果があります。病院を受診する頃では遅いので、家庭に常備しておくのがよいでしょう。コロナ流行の初期、急激に症状が進行する場合があり、その場合は葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏との合方である柴葛解肌湯(さいかつげきとう)が効果があったという報告がありました(3)。

 葛根湯は風邪の時の首筋の凝りにも効果があるので、肩こり等にも使われる場合もあります。落語に「葛根湯医者」という噺があります。患者が 「頭が痛い」と訴えると「それでは葛根湯」、別の者が「腹が痛い」と言えば「葛根湯」、しまいには付添人にも「葛根湯をお上がり」と勧める、どんな患者にも葛根湯で誤魔化す藪医者を揶揄したものですが、 葛根湯の応用範囲を考えると、あながち間違いではありません。

1) 白木公康: インフルエンザ治療のための漢方薬の作用機構-葛根湯の作用機序-. 医学のあゆみ 202: 414-422, 2002

2) 白木公康: 漢方薬を利用した抗ウイルス薬開発の展望. ファルマシア 49: 1101-1105, 2013

3) Takayama S, et al. : Multicenter, randomized controlled trial of traditional Japanese medicine, kakkonto with shosaikotokakikyosekko, for mild and moderate coronavirus disease patients. Front Pharmacol. 2022; 13: 1008946